あとがき

ライター・編集者 長瀬千雅のブログです

慰霊とは何か

Yahoo!ニュース オリジナル 特集でこちらの記事を書きました。

「ちゃんと触れていかないと、母の尊厳を回復できない気がした」画家・弓指寛治さんが語る、亡き母のこと #今つらいあなたへ(Yahoo!ニュース オリジナル 特集)

Yahoo!ニュース オリジナルとして #今つらいあなたへ のハッシュタグつきで公開されました。9月の自殺予防週間に合わせて、ウェブメディアにできるメッセージを発信しようという企画の一環なのですが、「それだったら弓指さんしかいない」と思って、お話を聞かせていただけませんかとお願いしたところ、快く取材を受けていただきました。
私は「四月の人魚」や「ダイナマイトトラベラー」は見逃していて(腰が重い自分がうらめしい)、最初に見たのはあいちトリエンナーレの「輝けるこども」でした。2011年に起きた、通学中の児童の列にクレーン車が突っ込んで6人の子どもが亡くなった事故を題材にした作品展示。被害者の生き生きとした生をたどっていくと、ある一点で被害者と加害者の視線が交差する。事故が起きた環境(クルマ社会や道路行政)についてまで考えさせる「輝けるこども」の素晴らしさは、数多の有識者が言及するとおりです。

弓指さんがその想像力でもって何を成し遂げているかについては、2020年1月のゲンロンカフェでの東浩紀さんとの対談で存分に語られています。再放送がVimeoかニコ動で見られるようなのでぜひ。

「悪の愚かさ」と芸術 – ゲンロンカフェ

私はVimeoのレンタル版で見たのですが、また見返したくなってもう一回レンタルしました。はじめから無期限の購入版にしておけばよかったぜ。

取材の過程でこんな本を読みました:
『自殺』『自殺会議』末井昭
『表参道が燃えた日』「表参道が燃えた日 山の手大空襲の体験記」編集委員会
『「死にたい」に現場で向き合う』松本俊彦編
『人はなぜ死に急ぐか』高柳功
など

原稿を書き終えたあと、オンサンデーズで弓指さんの鳥の絵馬を購入しました。鳥と一緒にいもむしが描かれているのは、岡本太郎とのコラボバージョンだそうです(岡本太郎がいもむしを美しいと言ったことに由来する)。

弓指さんは「挽歌」のあと、80年代にその死が社会現象になったあるアイドルについての作品に取り組みます。そのとき、鳥の「絵馬」を25764羽分つくり、絵の周囲に展示しました。弓指さんといえばこれ、というイメージがあります。

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