あとがき

ライター・編集者 長瀬千雅のブログです

美術とジェンダーについて

Yahoo!ニュース 特集でこちらの記事を書きました。

指導や演出の名の下に多発するハラスメントーー美術業界の体質に一石を、女性作家たちの挑戦(Yahoo!ニュース オリジナル 特集)

私は批評家ではないし、Yahoo!ニュースは批評媒体ではないので、人物が持っている経験と社会的な課題を結びつける書き方に、どうしてもなってしまいます。このあとがきには、記事に盛り込めなかった視点や証言を、ちょこっと書き残したいなと思っています。

いろいろ取材しながら、展覧会「女が5人集まれば皿が割れる」での、作家としての彼女たち(ひととひとのメンバー)の達成は、「ともすれば単なる自分語りとみなされがちなテーマのなかで、自分たちの経験や内面を探った結果、そこで見つけたものをきちんと作品化して、美術の文脈にのせた」ということだったんじゃないか、と考えていました。『現代アートとは何か』(小崎哲哉著)によれば、現代アートの3大要素は「インパクト、コンセプト、レイヤー」だそうですが、それに照らしても、もちろん作品によって強弱や凸凹はありますが、出展された作品はそれらの要素を満たしていたんじゃないか。取材では、それぞれの作品の着想や制作過程についてもうかがって、そのお話もほんとうにおもしろかったのですが、十分に記事に盛り込めなかったのが心残りです。高橋さんのハンマースホイの話とか、工藤さんの日本茜の話とか。工藤さんの作品は、手法や素材にも一つひとつ意味があって、繊細につむぎ出しているのに、全体としては骨太な印象があるという、不思議な読後感の作品でした。
わっちの素人感想なんかよりも、文中にも登場してくださった吉良智子さんが、雑誌「アートコレクターズ」8月号にレビューを寄稿されていますので、「興味あったけど見逃した」「見たけど解説があるなら読みたい」という方は、そちらをぜひご覧ください。私も吉良先生のレビューを読んで、「そういう意味があったのか」と気づいたことがたくさんありました。

取材の過程でこんな本を読みました:
『ホワット・ア・うーまんめいど』『ホワイトエレファント』出光真子
『テクスチュアル・ハラスメント』ジョアナ・ラス
『戦争と女性画家 もうひとつの近代「美術」』吉良智子
『女性画家たちの戦争』吉良智子
『近代日本の「手芸」とジェンダー』山崎明子
『「女」が邪魔をする』『アートヒステリー』大野左紀子
など