あとがき

ライター・編集者 長瀬千雅のブログです

人間力が爆発してた

Yahoo!ニュース オリジナル 特集でこちらの記事を書きました。

「自分にハンデがあるとは思わなかった」──「耳の聞こえないデザイナー」がつなぐ、ろうの世界と聴の世界(Yahoo!ニュース オリジナル 特集)

以前に、小学校の英語の先生を目指している、聴覚に障がいのある大学生の方にお話をうかがったことがあって。そのときに、聞こえない人の言語というものに、心惹かれてしまったのです。今回のこの記事も、聴覚障がい(およびそれによって生じる社会的な不平等)について書きたかったというよりも、聞こえない人たちの言語と文化について知りたいし、書きたいと思って、企画したものです。デザイナーとして活躍されている岩田さんは、後輩のロールモデルになるならと、取材を受けてくださいました。

けどやっぱり、「いじめられた」とか「進学や就職で困った」みたいな経験が、多少はあるのかなと思うじゃないですか。私は正直、ちょっとそう思っていました。が、そういった予測は、気持ちよく裏切られました。取材を進めるほど、岩田さんの人間力というか、生きていく力が爆発していた。それをそのまま書くしかない、「苦難の克服」「差別の告発」という定型は使えないと、途中ではらをくくりましたです。

記事のキーコンセプトは、「少しずつろう者としてのアイデンティティーを獲得していった」の部分にありますが、このアイデアは、教育社会学を専門とされている、研究者の羽田野真帆さんとお話ししているなかで、授けていただいたものです。

取材の過程でこんな本を読みました:
木村晴美『ろう者の世界』『日本手話とろう文化』
現代思想編集部『ろう文化』
森荘也『手話を言語と言うのなら』
長嶋愛『手話の学校と難聴のディレクター』
佐々木倫子『ろう者から見た「多文化共生」: もうひとつの言語的マイノリティ (シリーズ多文化・多言語主義の現在)』